上野研究室所属の本園千尋講師が2021年度ヒトレトロウイルス学共同研究センター熊本大学キャンパスベストペーパー賞グランプリを受賞しました!
ヒトレトロ研・感染免疫学分野(上野研究室)・講師 本園千尋
論文タイトル:SARS-CoV-2 spike L452R variant evades cellular immunity and increases infectivity
著者:Chihiro Motozono (first author), Mako Toyoda, Jiri Zahradnik, Akatsuki Saito, Hesham Nasser, Toong Seng Tan, Isaac Ngare, Izumi Kimura, Keiya Uriu, Yusuke Kosugi, Yuan Yue, Ryo Shimizu, Jumpei Ito, Shiho Torii, Akiko Yonekawa, Nobuyuki Shimono, Yoji Nagasaki, Rumi Minami, Takashi Toya, Noritaka Sekiya, Takasuke Fukuhara, Yoshiharu Matsuura, Gideon Schreiber, The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan) Consortium, Terumasa Ikeda, So Nakagawa, Takamasa Ueno, and Kei Sato.
雑誌名:Cell Host & Microbe (IF: 21.023 as of March 2022 )
掲載日:2021年7月14日
日本語要約: 新型コロナウイルスの「懸念すべき変異株」の出現がワクチンをはじめとする治療戦略において大きな問題となっており、特に最近のデルタ株やオミクロン株ではCOVID-19回復者ならびにワクチン接種者における液性免疫(中和抗体)の認識から逃れることが明らかになってきた。その一方で、ウイルスの感染制御に重要とされる細胞性免疫を司るT細胞応答からの逃避については依然として不明な点が多い。我々は世界でも高頻度のHLA class Iアリルの一つであるHLA-A*24:02に着目し、COVID-19回復者における抗原特異的T細胞応答の解析を行った。その結果、HLA-A*24:02陽性の回復者において、NF9 (S448-456: NYNYLYRLF)に対するCD8+ T細胞応答が優位であった。NF9エピトープはspikeタンパク質でも変異性の高いReceptor binding domain内に位置しており、そのエピトープ内にL452R (イプシロン株ならびにデルタ株に共通) とY453F (B.1.1.298) の2つの変異が存在することを見出した。NF9特異的T細胞はこれらの変異を含む抗原ペプチドに対して認識能が低下したことから、これらの変異はHLA-A*24:02拘束性T細胞応答からの逃避変異になる可能性が示唆された。さらにウイルス学的な解析から、特に、デルタ株が有するL452R変異はスパイクタンパク質の安定性、ウイルスの感染性ならびに膜融合活性を高め、その結果として、ウイルスの複製能を増強することが明らかになった。本研究により、デルタ株の特徴的なL452R変異はヒトの細胞性免疫応答から逃れ、且つ、ウイルスの感染性を高める特徴を持った変異であることが示唆された。
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